雀鬼・桜井章一、鬼の眼は青かった

trackBacks (1) givenComments (5) Sep 23, 2007

前回のエントリーでも紹介した、弊社で運営しているインタビューサイト「パーソンアップ」の取材で雀鬼・桜井章一先生に会いに行った。このブログでも以前のエントリー"『壁をブチ破る最強の言葉』by 桜井 章一(ゴマブックス)"でも先生の著書を紹介させていただいている。桜井先生を知ったのは7年前、大阪に住んでいた当時のこと。親しくさせてもらっていた麻雀好きの先輩から「近ちゃん、これ読んでみなよ。」と一冊の本を渡されたことがきっかけだった。「俺、麻雀知らないですから、読んでもわかんないですよ。」と断ろうとしたけれど、「いや、それは関係ないから、絶対読んだ方がいいよ。」と押されて渋々、その厳つい表紙の本を借りて読むことになった。そこで出会った言葉は厳しく、海のように深かった。

私はこう考える。
外面的なことに身を任せるのではなく、自分という内面に身を任せるのなら、自分という存在に確信を持つことができるはずなのだ。換言すれば、外面的なことだけに関心の目を奪われていては、いつまでたっても主体性を確立することなどできない。

雀鬼流。―桜井章一の極意と心得

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それから七年後、取材という形ではあったものの、僕は桜井先生に会う機会に恵まれた。これほど有り難い話はない。

1943年8月4日、東京 下北沢で桜井先生は生まれた。僕が生まれたのは、その34年後の全く同じ日、1977年8月4日である。今までの人生で、僕は、同じ誕生日の人と会ったことがない。初めて会うのが桜井章一先生。これもまた、この上ない有り難い話である。

雀鬼会の「平らさ」

慣れない町田駅から、歩いて五分のところに雀鬼会 町田道場はあった。二階に上がって入り口を入ると、多くの道場生の中に、桜井先生の背中が見えた。恐れ入ったのは、そこに流れる空気感が不思議なくらい「平ら」だったことだ。僕らが普段「入る」場所には、何かしらの「高低」が存在する。それぞれの年齢や役職を細かく訊かなくても感じることのできる「高低」。どこの組織も多かれ少なかれ、そういう空気を宿している。それに慣れてしまっているせいで、雀鬼会に流れるフラットな気に強く違和感を持った。どの人を見たらいいのか、どの人に名刺を渡したらいいのか、途方にくれる、そんな感じである。そこで、僕自身の内面が浮き彫りになった。普段はそうやって計算し、判断し、行動に移しているのだろう。小賢しいことだ。この道場ではそんなものは通用しないんだろう。

雀鬼の身体

お歳にしてはかなりの長身な桜井先生は、もちろん目立ってはいたけれど、凄味や気配、構え、全てを消していた。広い肩幅の肩は、ストンと落ちていて、立ち姿に全くの力みが感じられない。それでいて、どこにも隙がない。変な仮定の話だけれど、例えば、この方に殴りかかれと言われてもどこからどう切り込めばいいのか見当がつかない。防御を固めた相手だったら、あるいは、どこかにグッと力を入れて構えているなら、隙は必ずあったりする。けれど、重力に逆らわず驚くほど自然に立つ桜井先生にはそのようなものは見つからない。どこにも意識を払ってなさそうで、それでいて、身体の隅々にまで「集中を拡散」している。逆説的だけれどおそらく限りなく正確な表現だと思う。

雀鬼の眼

「俺はホームページとか、パソコンとか、全くわかんねえよ。携帯ですら持ってないんだから。そんな俺でもいいのかい?」

こんな言葉でインタビューは始まった。四角いテーブルで桜井先生の対面に座った僕は、暑くもないのに額にじわっと汗をかいていた。道場生の方が持ってきていただいた温かいおしぼりにも手をつけれずにいた。すると雀鬼は奥の道場生に言った。「おーい、"つめしぼ"持ってきてあげなよ。」と。何を持ってこられるのか全く分からない。届いたのは、「冷たい」おしぼりだった。気遣いが温かい。

最初の質問に答えていただいている間、その一言一言を凝視、いや凝聴していると、頭の中が空になった。何日も前からインタビューの構成を念入りに考えて、桜井先生の著書を10冊ほど現場に持ち込んで、本を開きながら「この部分は…」みたいな話をするつもりだった。けれど、完全に空になった。正直なところ、謝ってインタビューを中止して帰ろうかとも考えた。それほど、桜井章一という人物は圧倒的だった。全く攻撃的でもない。威圧してるわけでもない。ただただそこに存在してたたずんでいるだけなのに。

そこで、正直に謝ることにした。「いろいろ考えて組み立ててきたんですが、頭が空っぽになってしまいました。すみません。」そう言った僕に、先生は顔をくちゃくちゃにして、深く優しい笑顔を見せてくれた。「それでいいんだよ。そうなんだよ。真っ白でいいんだよ。」と。

そう、真っ白にするべきだったのかもしれない。僕が「組み立て」られるような人ではない。空っぽになってただただそこに座らせてもらうだけでいい。パーソンアップの「前編」「中編」「後編」、、など忘れてしまおう。心がストンと落ち着いた。真っ正面に見つめる桜井先生の目は青かった。不思議なくらいに青かった。透き通っていて、昔式根島で見た海の色のようだった。

それから、45分の予定のインタビューが一時間半も続いた。途中で何度も感じ入って眼に涙がいっぱいたまった。多分泣いてたと思う。先生がトイレに立たなければ、誰かに止められるまで我に返らず聴き続けていたかもしれない。その後写真の撮影をさせていただき、バタバタと片付け、お礼を言って道場を後にした。町田の街が、往路と違って見えた。

雀鬼からの電話

休日の今日オフィスで仕事をしていると、電話が鳴った。桜井先生からだった。「良い時間だったよ。」と、本当にただそれだけのために電話をいただいた。電話を切った後もしばらく受話器を握ったままでいた。何度も書いているけれど、なんて有り難い話だろうか。海のような青い鬼の眼がまた浮かんできた。

※インタビュー記事は、10月の頭に掲載されます。是非ご覧ください。

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shima at 14:52 on Sep 23, 2007

人との出会い・縁って不思議で大切なものだよねぇ。と年を重ねるごとに深く想うのです。今までのパーソンアップも興味深く読ませてもらっていたけど、今回のがとびきり楽しみ!!じっくり堪能・咀嚼させていただきます。

AKY at 23:32 on Sep 23, 2007

ほぉ〜、桜井章一さんか。
凄いとこに行ったね、今まで正直なとこパーソンアップの人選にあまり興味が持てなかったけど今回は楽しみだわ。

king at 00:28 on Sep 25, 2007

「平らさ」のところも、納得!だったんですが、「雀鬼の身体」の部分も本当にそんな感じでしたね。凝視していた訳ではないんだけど、それすごく感じました。
真正面から正直に向かってくださるから、自分達も真正面から正直に向かおう、と思わせられた、、できることなら何度もお会いしたい、、、、方ですね(そりゃ道場に通わなきゃー無理だね。笑)

PersonUp at 21:46 on Apr 15, 2008

パーソンアップ、いつも楽しく読ませて頂いているのですが、インタビューページが2ブロックに分かれているのが読みにくくて。。左側を最後まで読んだら、また上に戻って右側を読む・・・というのは大変読みにくいです。デザインを変えていただけるとうれしいのです。。

本文とは関係ないコメントですみません。

きーす at 13:54 on Aug 18, 2008

いいインタビューだったのでしょうね
行間から、温度感が滲んでいます

羨ましいです